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震災1年半の風景 「私たちのこと忘れないで」

震災1年半の風景 「私たちのこと忘れないで」
公明新聞:2012年9月11日付

進行する「風化」 痛哭に耳澄まし、復興加速を
「私たちのことを忘れないで!」。小さな命を全開にして、12歳の少女が切々と訴える。聴衆の間に嗚咽が漏れる……。あの日から2度目の秋を迎えた東北の被災地の風景の一コマだ。

少女の名は佐々木夏蓮ちゃん。県外からの観光客らを対象に、古里の宮城県南三陸町など県内各地で「3.11」の記録と記憶を語り続けている。

東北太平洋沿岸部の街々を歩くと、必ずと言ってよいほど、夏蓮ちゃんのような「語り部」に出会う。ほとんどが被災者で、親や子どもを失った人も少なくない。

当時、小学6年生だった夏蓮ちゃんも、自宅を津波で失い、異郷で家族別々の暮らしを余儀なくされた。友達との別離も経験した。「できるならあの日の記憶を消し去りたい」と願う。

だがそれでも、涙をこらえてあの日を語り続けるのは、緩慢に、しかし確実に進行する「震災の風化」に抗うためだ。語り部たちは率直に胸の内を吐露する。「風化で被災地への関心が低下すれば、復興はさらに遅れ、被災者は見捨てられる。それが怖い」と。

実際、被災地を訪ねると、廃虚さながらの風景が今も随所に広がっていて、胸が痛くなる。行き場のない一人暮らしのお年寄りが仮設住宅で細々と暮らしている姿にも涙を禁じ得ない。「3.11」は「今ここにある問題」であることを痛感する。

にもかかわらず、被災地外では震災の記憶が日一日と風化しつつある。あの日は過去のこととなり、今なお深い傷と無念さに苦しむ被災者との意識差は拡大するばかりだ。

追及されるべきは、政府・民主党の態度だろう。先頭を切って風化に抗うべき立場にありながら、党内抗争に明け暮れ、上から下までが「わが身の安泰」に汲々としている。あきれた面々だ。

「一国の為政の枢機に参与する人々だけは、(風化という)この健忘症に対する診療を怠らないように」。作家にして物理学者の寺田寅彦が78年前、随筆「天災と国防」に記した一節が思い返される。

きょう、震災から1年半。 被災地では午後2時46分を期し、遺族らが追悼の祈りを捧げる。「あの日を忘れないで」との願いを込めて。

その痛哭に耳を澄ましながら、被災地外に住む私たちも静かに手を合わせつつ、いつかどこかへ置き忘れてしまったあの日の記憶と誓いを取り戻したい。そう、震災直後、家庭で地域で職場で確認し合った「オール・ジャパンによる支援」というあの誓いを。
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| 新聞 | 13時36分 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑















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